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ミステリの祭典

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ヨーロッパ・イン・オータム

作家 デイヴ・ハッチソン
出版日2022年06月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 びーじぇー
(2025/08/20 18:26登録)
西安風邪の蔓延で数千万人の人間が死亡、連鎖的にEUまでもが崩壊、皆が好き勝手に小国を乱立するようになったカオスなヨーロッパを舞台にしている。
物語の中心となるのは、ポーランドのレストランでシェフを務めるルディという人物。彼は生まれ故郷のエストニアからバルト諸国の飲食店を渡り歩いてきたが、その経歴と語学力をかわれ、クルール・デ・ボワと呼ばれる組織にスカウトされる。
本作のスパイ小説としての特徴は、諜報活動の成功が作中では、ほぼ起こらずかわりにルディが理不尽極まりない失敗に晒され続けていくところにある。時には読者にすらも何がどのような理屈で起こっているのか分からぬ異常事態が起こって読みながら唖然としてしまう場面もあるが、最終的にはそうした違和感や理不尽の全てに答えが与えられ、世界の見え方が大きく変わることになる。そのラストはSFとしても実に魅力的だ。

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