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ミステリの祭典

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素晴らしき愚か娘

作家 シャルル・エクスブライヤ
出版日不明
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 クリスティ再読
(2025/08/08 16:03登録)
女スパイ、ペネロープ....
って言ったら「サンダーバード」のレディ・ペネロープなんだけども、本書のヒロインもペネロープ・ライトフェザー嬢。レストランで知り合った男に一目ぼれされる。
このペネロープは美人だけどお針子。海軍省のD局局長のダンフリー卿夫人のお気に入りで、お屋敷に出入りしている。男はピオトル・セルゲイエヴィッチ・ミルーキン...父は白系ロシア人亡命者でソ連への義理はないはずなんだども、ヘンな逆恨みからソ連のスパイで殺し屋のアルメニア人テル=バグダッサリアンにスパイとしてスカウトされてしまった!ハリー・コンプトンと名乗ってこのダンフリー卿が持つ「なだれ」と呼ばれる秘密レポートを奪取するよう命じられるが、偶然知り合ったペネロープがダンフリー卿の屋敷に出入りしていることを知る。実はペネロープは共産党員であり、ピオトル(ハリー)はペネロープに適当な話をして、ダンフリー卿の屋敷で開催されるパーティに潜入することになった!

けどね、このパーティも「なだれ」情報も罠であり、ソ連スパイをおびき寄せて内部に潜む二重スパイを暴き出そうという計画だったんだ。はたしてペネロープとハリーは「なだれ」情報をゲットできるか?と言ってもさあ...ペネロープ自身「アタマの弱い」娘として、思い付きのように共産党に入党したわけだしね。清楚な美人のクセにけたたましいバカ笑いと素っ頓狂な言動にハリーもヘキエキしつつ、陰謀と罠と暴力の世界に足を踏み入れてしまう。
でもこれ全部、吉本新喜劇。アカラサマに安易に「なだれ」情報も金庫から盗み出せてしまうクセに、何度も金庫に舞い戻ってしまうw。ソ連大物スパイを行きがかり上殺してしまい、その死体を運搬中に検問に逢うけども、ペネロープが「死体を運んでます~」なんて言うたびに冷や汗をかきつつも警官たちは大爆笑。

いやエクスブライヤってパロディじゃないんだ。軽演劇というか、マンガ的なキャラたちが右往左往する群像的なコメディというべきなんだよね。「死体をどうぞ」で示されたように、エクスブライヤが大人数のマンガ的キャラを捌ききる手腕というのは、なかなか大したもの。有能な舞台演出家というイメージがあるが、やはりキャリアの出発点で演劇や映画とかかわりが多かったようだ。

コメディだから「めでたしめでたし」で終わらなきゃホントじゃない。だからめでたし、めでたし。いいじゃないか。

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