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ミステリの祭典

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暗黒街道

作家 生島治郎
出版日1994年10月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2025/07/09 15:39登録)
(ネタバレなし)
「ヤモリ」こと、マル暴の悪徳刑事・野守一造(のもり いちぞう)は、トイレを借りに入った新宿のスタンド・バー「サニイ・サイド」で、トラブルに巻き込まれてるらしい青年を見かける。だがその青年「ラット」こと岩切完二は暗黒街の末端にいる、ムエ・タイの心得がある若者。彼は、バーのママで20代後半の美女「ダンス」こと阿部舞子とともに、因縁をふっかけてくるヤクザものをあしらおうとしている所だった。成り行きに介入し、半ば強引にラットとダンスに貸しを作ったヤモリは、妙に気の合う三人組を結成。ヤクザやワルたちを相手にしながら、熱い金を稼いでいく。

 気が付いたら生島治郎を二年も読んでない。とりあえず何か軽そうなものでも読もうと思い、これを手に取った、ノワール系の連作短編集。「週刊小説」に不定期に92~94年の間、掲載された、新規の主人公トリオのシリーズ短編が7編収録されている。
 正確に確認した訳じゃないが、たぶんこの時期(80年代後半~90年代初頭)の翻訳ミステリ分野ではロス・トーマスとレナードの二大巨頭が幅を利かしていたんだろうと思うし、生島が弟分の大沢在昌から「アニキ、最近またトーマス、面白いっすよね」とか何とか言われて(改めて?)読み始め、なるほどなー、じゃあ、オレもいっちょ……とか何とかという流れで書いてみた、和製・陽性ノワール連作がコレじゃないか、という気がする。
 知らんけど。

 各編、お話が好テンポで転がり、その淀みなさにさほど物足りなさを覚えないのは、すでに大家の円熟のベテラン芸、という感じで快い。90年代に非・私立探偵小説系の通俗ハードボイルド連作を良い意味でのスタイリズム優先で書いたらこんなのになるかな、という感触もあるし。これはこれでいいでしょう。
 このシリーズはこれ一冊で終わっちゃったのかな? 続きがあるなら、もうちょっと読んでみたい。

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