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ミステリの祭典

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夜明けまでに誰かが

作家 ホリー・ジャクソン
出版日2025年07月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 人並由真
(2025/09/16 18:57登録)
(ネタバレなし)
 フィラデルフィアの女子高校生レッド(レッドフォード)・ケニーは、親友のマディ(マデリン)・ジョイ・ラヴォイに誘われて、同年代の男子高校生2人、そして引率役であるマディの大学生の兄とその彼女という計6人のグループで、大型キャンピングカーでの旅行に出かけた。だが一行が携帯電話の電波圏外の僻地に入ったとき、何者かが車を狙撃。タイヤを撃ち抜き、さらには銃撃で牽制して彼らをキャンピングカーの中に閉じ込めた。周到な手段で車内との通信環境を設けた謎の狙撃者は、ある要求を突きつける。

 2022年の英国作品。
 評者は邦訳のある人気シリーズは未読なので、作者の著作はこれが初読みである。

 主要人物はメインの若者6人と謎の狙撃犯だが、当然のごとく、彼らの抱える事情や過去のあれこれの逸話を明かす形でサブストーリーの枝葉が拡散。広義での登場人物はさらに多くなる。
 
 メインストリームのお話と脇筋のエピソードの揺り動かしがキモという感じのサスペンス編。
 組み立ては、いかにも21世紀の成熟したエンターテインメントという手応えであり、加速度的なベクトル感でいっきに読ませる。
 いい意味で話がさほど広がらず、手堅い構成なのが良い。で、そこが最終的に、ちゃんと主人公ヒロインのレッドが抱える内省につながっていくのもよろしい。
 
 それで、読み落としでなければ、一件だけわざと曖昧なまま終わる箇所があると思うが、その辺の演出は、作者のちょっと厨二感覚的な人間観か? まあ多層的な余韻を残して終わるのもアリだよね。

 私がわざわざホメなくっても……という、今年の話題作で評判の娯楽作なのだが、評点を7点に押さえると、それはそれでウソになる気分。それくらいには面白かった。

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