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ミステリの祭典

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砂男/クレスペル顧問官
他に「大晦日の夜の冒険」を収録

作家 E・T・A・ホフマン
出版日2014年01月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 クリスティ再読
(2025/06/24 11:33登録)
光文社古典新訳文庫から。
要するにこの本は、オッフェンバックの「ホフマン物語」の原作をオペラの順に翻訳したもの。ホフマンでもロマン派幻想ホラー小説の有名作をまとめたことになる。「砂男」は人造人間コッペリアの話だし、「クレスペル顧問官」は名歌手でも歌うことで命を削る女性の話、「大晦日の夜の冒険」はシャミッソーの「影をなくした男」にインスパイアされてホフマンが書いた「鏡像を魔女に差し出した男」の話。

ロマン派らしい芸術愛好もテーマだが、「砂男」は別格だね。「砂男」はよく見ると、前半の「眠らない子供の眼をくりぬく夢魔」としての砂男の話と、後半の人造人間に恋する男の話が、今一つ噛み合わないようにもみえるのだ。だからオッフェンバックのオペラではコッペリア(オランピア)の話で後半に取材するし、あるいは「砂男」と題すると前半の砂男を巡るホラーになる。しかし、この両者の分裂は、主人公を愛するクララが忠告するように、「自分の中に潜む暗黒」を外部に投影した「悪」であるという共通性を持っているわけだ。「インスマスの影」もそうだが、優れたホラーには破綻があるが、まさにその破綻によってより深い真実を示すという、興味深い側面があると思っているよ。

であと乱歩の「押絵と旅する男」って実は「砂男」にインスパイアされたんだな。改めて読み直すとそれがよくわかる。「目羅博士」の義眼趣味もそうかもね。
(あと Paul Berry の "The Sandman" という作品があって、これは前半「砂男」がモチーフのホラー人形アニメ。なかなか怖い。「人形アニメ」というのがコッペリアの話と重なって面白いなあ)

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