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ミステリの祭典

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日はまた昇る

作家 アーネスト・ヘミングウェイ
出版日1958年09月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 斎藤警部
(2025/06/18 21:18登録)
短く切り出した刀削麺の様な文と会話が並ぶハードボイルド小説。 ハードボイルド・ミステリではない。
欧州大戦後、英米人の若者男女が休暇でフランスとスペインへ出向き、外国人として享楽と混乱の時を過ごす。
主役の男子は戦争で身体に或る象徴の様な障碍を負っており、これがために生じる、準主役の一人である(奔放とは違う)淫蕩な女子との文学的なほど特権を帯びた関係が、この小説の核かも知れない。

「あたしとあなたとだったら、とても楽しくやっていけるはずなのに」

躍動する人物描写もさることながら、風景や建物、部屋など静物系描写の活きが良く、ありがちな退屈を全面排除している。
中でもスペインの祝祭の描写は素晴らしい。 喧しい音声がずっと聞こえ、匂いも映像もずっと色鮮やかだ。
物語の途上のような、むしろストーリーのワンカットのような、だが狙いすまして希望が解き放たれたようなラストシーンが、とても良い。

(主役へ) 大丈夫だ。 君が既に悟っているように、人生は愉しい事とそれへの予感とではち切れんばかりだ。

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