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ミステリの祭典

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審議官 隠蔽捜査9.5
隠蔽捜査シリーズ

作家 今野敏
出版日2023年01月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 猫サーカス
(2025/06/14 19:48登録)
大森署から神奈川県警へと居場所を変えながら混沌とした警察社会を正論によって照らし出す主人公・竜崎と彼にまつわる人物たちを各々主人公に据えた九編の作品が収録されている。竜崎が去った大森署において、新任の署長が着任するまでの狭間で起こった難事に副署長と警務課長が「竜崎イズム」をもって対峙する冒頭の「空席」からして痛快。彼らは竜崎だったらどうするかと考えながら状況に対処していくのである。妻の冴子がふと起こった既視感に頭を悩ませる「内助」、息子の邦彦が怪しげな白い粉末を預かることになる「荷物」、娘の美紀が会社での悩みを抱えながら駅での痴漢トラブルに巻き込まれる「選択」。いずれも短い話の中で興味の「核」を浮かび上がらせていく手腕に唸らされる。例えば「専門官」において提示される、腕はいいが階級が上の人間から常に問題視される刑事をどのように新任の刑事部長に会わせるのかという、いかにも警察組織ならではの命題が絶妙で、良質なサスペンス小説の味わいに満ちている。

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