| 審議官 隠蔽捜査9.5 隠蔽捜査シリーズ |
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| 作家 | 今野敏 |
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| 出版日 | 2023年01月 |
| 平均点 | 6.33点 |
| 書評数 | 3人 |
| No.3 | 7点 | haruka | |
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(2025/12/07 19:55登録) 各話ともちょっとした事件が発生して、竜崎のアドバイスをもとに解決に向かっていく。本編と違って、解決するのは各話の主人公であり、そのへんのバランスが絶妙。今回は竜崎の家族にも焦点があたっており楽しめた。 |
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| No.2 | 6点 | E-BANKER | |
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(2025/11/23 12:48登録) 「隠蔽捜査」シリーズ恒例となったスピンオフ作品。題して「隠蔽捜査9.5」。 今回も竜崎伸也という存在に大きく影響を受けた脇役たちが活躍する作品集となっています。 単行本は2023年の発表。 ①「空席」=竜崎の前任地となった大森署の「狼狽」を描いた第一編。とにかく竜崎という類まれな上司に決めてもらいたい、という小市民の副署長以下の幹部たち。さんざん迷ったくせに、竜崎に相談した後はアッという間に解決。 ②「内助」=本編は竜崎の細君である「竜崎冴子」が主役。普段は、まさに「内助の功」の役割を全うしている冴子が、ある放火事件に違和感を感じて、自らが推理を巡らす。普通なら「部外者は引っ込んでろ!」と言いそうなものだが、竜崎は違った・・・ ③「荷物」=竜崎の長男・邦彦が主役。邦彦といえば、シリーズ第一作で竜崎が左遷されることとなるきっかけを作った張本人。ということで、二度と父親に迷惑をかけてはならないという感情が邪魔してしまう。 ④「選択」=今度は長女の美紀が主役(美紀のほうが邦彦の姉。念の為)。大手広告代理店で多忙な日々をおくる美紀が、大事なプレゼンの日に通勤電車の中で痴漢を捕まえたことから事件は起こる。セクハラ上司やしつこい刑事に悩まされるなか、それでも助けてくれる人はいた。もちろんひとりは竜崎なのだが・・・ ⑤「専門官」=今度は現任地である神奈川県警が舞台。キャリア上司を嫌う、たたき上げのノンキャリア・矢坂が一方の主役。今まで散々キャリア上司を嫌ってきた矢坂も、竜崎の人間性の前に陥落。 ⑥「参事官」=神奈川県警にいるふたりの参事官。ひとりはキャリアでひとりはノンキャリア。ふたりは大変仲が悪いという・・・。その問題を解決しろと上司である本部長から命じられた竜崎。いろいろ策を練った結果、ふたりは「仲がよい」という結論になる? まあふたりとも大人だからね。 ⑦「審議官」=本編は前作「探花」の後日談的一遍。「探花」で米軍の捜査官を警視庁管内で捜査させたことを今さら問題視する嫌ーな上司が登場。それが長瀬「審議官」。ただ、これも竜崎の前に陥落。 ⑧「非違」=竜崎の後任の大森署長は、なんと「超美人」の女性キャリア。竜崎の大森署時代の天敵的存在だった野間崎管理官が足しげく大森署に来るようになった訳は当然・・・。 ⑨「信号」=神奈川県警のキャリアたちの飲み会。題して「キャリア会」。そのままじゃねえか! 以上9編。 もう、安定してます。素直に面白いです。特に竜崎の家族を主役に据えた②から④が良かった。 ただ、これは以前から書いてますが、竜崎をあまりにも神格化しないで欲しい。たまには弱い部分とか、ピンチシーンももっと盛り込まないと、そろそろ(もう?)飽きがこないとも限りませんよ。 なーんてことは、作者なら十分承知してるんでしょうけどね。こういうスピンオフも大歓迎。 |
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| No.1 | 6点 | 猫サーカス | |
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(2025/06/14 19:48登録) 大森署から神奈川県警へと居場所を変えながら混沌とした警察社会を正論によって照らし出す主人公・竜崎と彼にまつわる人物たちを各々主人公に据えた九編の作品が収録されている。竜崎が去った大森署において、新任の署長が着任するまでの狭間で起こった難事に副署長と警務課長が「竜崎イズム」をもって対峙する冒頭の「空席」からして痛快。彼らは竜崎だったらどうするかと考えながら状況に対処していくのである。妻の冴子がふと起こった既視感に頭を悩ませる「内助」、息子の邦彦が怪しげな白い粉末を預かることになる「荷物」、娘の美紀が会社での悩みを抱えながら駅での痴漢トラブルに巻き込まれる「選択」。いずれも短い話の中で興味の「核」を浮かび上がらせていく手腕に唸らされる。例えば「専門官」において提示される、腕はいいが階級が上の人間から常に問題視される刑事をどのように新任の刑事部長に会わせるのかという、いかにも警察組織ならではの命題が絶妙で、良質なサスペンス小説の味わいに満ちている。 |
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