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ミステリの祭典

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ブラックチェンバー

作家 大沢在昌
出版日2010年03月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 E-BANKER
(2025/06/14 14:29登録)
ノンシリーズのハードボイルド系クライム・サスペンス(とでも分類すればよいか・・・)
文庫版で600ページ超の長尺。恐らくいつもの“大沢節”。
単行本は2012年の発表。

~警視庁の河合はロシアマフィアの内偵中に拉致されるが、殺される寸前「ブラックチェンバー」と名乗る組織に救われた。この組織は国際的な犯罪組織に打撃を与える一方で、奪ったブラックマネーを資金源にしているという。スカウトされた河合は、ブラックチェンバーに加わることを決断。その河合たちの前に人類を崩壊に導く恐るべき犯罪計画が姿を現わす・・・。進化し続ける国際犯罪の実態を抉り出す、クライムサスペンス巨編~

新型コロナが初めて騒がれ始めたのが、確か2019年末から2020年始にかけてだった。
本作の発表が2012年とのことだから、本作が新型コロナのパンデミックを予言したものとは言えない。
恐らくは、それ以前のSARSの流行あたりに感化されたものだと推察。

ちょっとネタバレみたいになってしまうけれど、そう、本作の重要なプロットのひとつは、新型インフルエンザ(本作中ではこう呼ばれる)によるパンデミック。
主役となる元警視庁刑事の河合が、ブラックチェンバーと名乗る非政府組織にスカウトされ、日本の広域暴力団とロシアマフィアが手を組んだ巨悪と対峙することとなる。
なかなか巨悪の実態・実像がつかめず、国内外あちこちで捜査を行い、はたまた推理・推察を繰り返していく展開。

しかし、ある事件関係者の自宅を家宅捜索した際に見つかったのが、新型インフルエンザ治療薬のパッケージで、もう、この時点で凡その展開が読めてしまうこととなる。
ただ、その後もああでもない、こうでもないという展開が続くのがやや冗長。
そう、本作は全体として冗長さが目立つ。
新宿鮫シリーズなどと比べると、どうしてもスピード感やシリアスさが足りないように思えてしまう。
もうひとつ気になったのが、謎の組織として登場するブラックチェンバーの矮小さ。
要は「練りこみ不足」なのだと思うが、当初は犯罪組織の壊滅と強欲に資金奪取することを両立させるなどとカッコいいことを表明していたが、徐々にトーンダウン。中途半端な存在でしかなくなる。

ということで、ちょっと辛口評価になってしまうけれど、さすがに作者だけあって、一定のクオリティはある、とフォローしておきます。
元刑事と広域暴力団の若頭の対決なんかは、いかにも“大沢節”。安定感はさすが。

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