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ミステリの祭典

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天界の戦い

作家 チャールズ・ウィリアムズ(英国)
出版日2025年04月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2025/09/29 01:17登録)
(ネタバレなし)
 その年の6月のロンドン。出版社パーシモンズ社の社内で、見知らぬ人間の死体が発見される。遺体は編集者ライオネル・ラックストローの机の下にあったが、同人は被害者など見たこともなかった。一方、パーシモンズ社で刊行される新刊の校正刷りを巡り、その周辺で奇妙な事態が動き出す。

 1930年の英国作品。
 普通の狭義の推理小説ではないようだが、英国のクラシックミステリ分野のなかでなんか独特の位置を占める作品らしい、というネットでの風聞が気になって読み始めた。
 とにもかくにも、未訳で本邦・初紹介の海外クラシックミステリ長編、というだけで気にはなる。

 中味はどうやら秘密結社がからむオカルト冒険スリラーのようで、ホイートリーの「黒魔団」シリーズ(実はまだ未読だが・汗)みたいなもんじゃろかいな? という予見で、ページをめくり始めた。

 しかし正直、ベテラン翻訳者・風間賢二とこちらの相性が悪いのか、あるいは編集の力がないのか、けっこうお話も文章も読みにくい。
 本文でいきなり固有名詞の人名がとび出し、どういう立場の人間だとかわからないとか、2020年代の翻訳ミステリとしては不親切であろう。具体的にはそのカタカナ名前を初めて出す前にさりげなくどんな素性の人間かすぐわかる肩書や言葉を入れればいい(いや原書通りなのかもしれないが、そのまま放っておくのは21世紀の商業翻訳として、悪手すぎる)。
 そんなのが数カ所あり、さらにメインキャラのひとりジュリアン・ダヴェナントの名前表記が巻頭の人物一覧では違っていたりと、編集や訳者のやる気のなさを感じた。
 
 その辺もあって5分の3まではスローモーな展開も含めて大あくびの作品だったが、後半、悪の黒幕がかなり外道な事をしかけ始めてからは、ちょっとだけ面白くなった(まあ、そこそこ)。

 物語の最後はかなりの大技で、あれよあれよという内に決着がつく(日本人で、非クリスチャンのこっちにはわかりにくい面もあるが)。
 個人的にはキライじゃないギミックだけど、完全にここで(中略)になってしまうね。まあ、そういう作品だとは当初から思ってはいたから、踏み込みの浅い深いの問題なんだけど。

 とにかく読み終わるまでに、実に疲れた。まあこういう作品との遭遇も、タマにはあるっていうことで。

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