(2025/05/23 23:44登録)
(ネタバレなしです) 英国のエイドリアン・マッキンティ(1968年生まれ)が2014年に発表したショーン・ダフィシリーズ第3作です。警察小説のシリーズですがハヤカワミステリ文庫版でこの作者のことを「イギリス<ガーディアン>紙は、デニス・レヘインやジェイムズ・エルロイと肩を並べる現代ノワールの旗手と評している」と紹介しています。本格派推理小説以外のミステリーに関心の低い私には相性がよくないはずなのですが裏表紙の粗筋紹介では本格ミステリと記載されており、巻末解説を島田荘司が書いています。この解説では島田の「占星術殺人事件」(1981年)が英訳されて海外出版された経緯が書かれており、好評だった喜びを隠せていませんが(笑)、マッキンティが影響を受けて「ノワール小説の設定内で密室ミステリーを書くことは可能だろうか」と本書を書いたそうです。密室トリックをめぐる議論や容疑者たちのアリバイ確認など本格派の謎解き要素は確かにあります。密室トリックは某米国作家の1930年代後半の作品のトリックを連想させますね。しかし謎解きが終わってもまだ物語は続き、そこは完全にノワールの世界です。1980年代の北アイルランドを舞台にしていますが北アイルランド紛争の緊張感がひしひしと伝わってきます。
|