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ミステリの祭典

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歌麿さま参る

作家 光瀬龍
出版日1976年01月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 糸色女少
(2025/05/19 22:58登録)
関ヶ原の戦から江戸時代を舞台にした6編が収録されている。
「関ケ原始末」、「三浦縦横斎異聞」は、時代小説らしい叙述を徹底しているがゆえに、そこに侵入する異物が強い印象を残す。
残る4編は、タイムパトロールもの。一九七〇年代の古美術店に持ち込まれる名刀や写楽の絵の出所を追って、光瀬作品でお馴染みの笙子・かもめ・元が江戸に赴く表題作をはじめ、ある種の定型に則った作品群である。その中では定型を離れ、江戸に暮らす時間局員の心情を描きつつ、皮肉な結末へと着地する「紺屋町御用聞異聞」の悲哀と意外性が忘れ難い。
当時の人々の暮らしを丁寧に描く文章に、時代小説というジャンルに対する作者の強い思い入れが窺える。

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