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ミステリの祭典

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謎の飛行計画
改題『謎の航空写真』

作家 福本和也
出版日1977年02月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2025/05/16 18:15登録)
(ネタバレなし)
 航空写真撮影会社「東アジア航測」のパイロット・水田透と撮影士の米沢吾一は、就労中にセスナ機で山梨県の上空を飛んでいる際、たまたま余ったフィルムで地上を撮影。なんとその大月市の山中には、地表から目立たくなった巨大な何かの輪郭が確認された。東アジア航測と懇意の理学博士・西野純一は航空写真から得られる、さらには入手できる限り現地の地表の情報を解析し、そこに仁徳天皇陵よりもさらに巨大な古墳が埋もれている可能性を突き止めた。かたや、水田の内縁の妻とよべる恋人・安城志保子は理由も定かでないまま、彼のもとを去り、水田はその行方を追う。やがて関係者の視界に、謎の変死事件の知らせが入って来た。

 改題された角川文庫版で読了。航空業界に精通した作者だけに、航空機や航空写真に関する含蓄の情報量はすさまじく、その辺の世界に導かれていく臨場感は並々ならない。さらに本作は、いわゆる昭和のB級伝奇古代ミステリの興味もあるが、そこに水田と恋人の不安定な状況でのドラマ、さらにはもうひとりの重要人物となる・「静野クリニック」院長・鎭野幹也のサイドストーリーなども絡み、中盤で起きる殺人? 事件と合わせて、複数の挿話が縦横に交錯。
 だが話の幹は古墳捜しの謎とはっきりしてるので、ややこしさや雑駁感などは特にない。
 言うならば、切り揃えの悪い大小の野菜の具材を多めにぶっこんで、まずまずの味付けで作った八宝菜みたいな感じのジャンル越境ミステリ。

 終盤のけたたましいまとめ方など、他の謎解きミステリだったら、たぶんまず許さないよ、という感じだが、こーゆー通俗・B級(でもその辺を含めてなかなか面白い)なら、まあアリじゃないかという感じだ。
 で、最後まで割と重要なメインキャラが放っておかれた気もするが、まああの人物は(中略)ということなんだろうな。それならそれでいいか・

 典型的な昭和のB~C級ミステリ。もちろんキライではありません。

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