脅迫者は過去に潜む フランク・ヘイスティングス警部 |
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作家 | コリン・ウィルコックス |
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出版日 | 1987年10月 |
平均点 | 7.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 7点 | 人並由真 | |
(2025/03/28 17:40登録) (ネタバレなし) 「私」こと、サンフランシスコ市警の警部フランク・ヘイスティングスは、先日の事件で負傷。現在は恋人で小学校教師である40歳の離婚女性アン・ヘイウッドの家で、彼女の2人の息子とともに同居しながら静養していた。そんななか、大統領の右腕といわれるカリフォルニア州の大物政治家で66歳のドナルド・A・ライアン上院議員のもとに匿名の脅迫状が届く。ライアンは表沙汰にしていないが最近、心臓を弱らせており、その件も含めて事態は深刻そうだ。彼の側近やFBI、それにホワイトハウスのシークレットサービスたちが対処にあたり、市警からはヘイスティングスが捜査担当に任じられた。だがヘイスティングスと仲間の刑事たちは次第に、ライアンの周辺を取り巻く人間関係の綾と秘められた真実に分け入っていく。 1982年のアメリカ作品。 作者ウィルコックスの12番目の著作で、フランク・ヘイスティングス警部シリーズの第11弾目の長編(そのうち一本は、プロンジーニとの合作で、名無しの探偵との共演編)。 1980年代には日本でも相応の安定の人気で、当時のSRの会なんかでも自分を含めて何人か常連ファンがいた好評シリーズだったが、往時からほぼ40年も経つ(おー!)と、誰も読まなくなっていた連作シリーズであった。しかし本サイトでもこれまでただの一人もまったくレビューを投稿してない、というのは極端だよな~(涙)。 しばらく前に、そんな現在では完全に忘れられた作家&シリーズになっているのを意識して、じゃあ自分はどこまで読んでんだっけ? と再確認したが、この今回読んだ『脅迫者は~』が、例の合作編を含めて邦訳の11冊目で最後の一冊(順不同に出たけど、とりあえずそこまでは全部出た)。 原書ではシリーズはもうしばらく続き、未訳のものが何冊かあるようだが、自分はどうやらシリーズ9冊目までは大昔にリアルタイムで読んでいたっぽい。あー、なら第10冊目から読めばよかったかな? つーわけで何十年ぶりかで読みだした(再会した)かつてのおなじみシリーズの読み残しの一冊だが、おなじみ宮脇孝雄の翻訳は快調(とにかく各キャラの芝居やセリフ回しの訳し分けがうまい)で、最高潮にサクサク読める。 ストーリーが進むにつれて事件の奥行きが広がっていき、メインの筋立てと並行してヘイスティングスと恋人アンの関係上のトラブル(アン本人とも息子たちとも円満だが、アンの元旦那の精神分析医がイヤな奴で騒ぎの種をもってくる)も語られ、お話全体に適度な立体感があり、退屈しない。 後半、話の具をやや盛り込み過ぎた感はあるが、シリーズも十冊以上も続けて事件の情報や文芸を増やして先行作品と差別化しなければならなかったのであろう事情を一顧するなら、まあ納得。トータルとしてはちょっとメグレものめいた路線にも踏み込み、なかなか面白かった。 で、前述のとおり、日本では当時それなりの人気シリーズだった訳だがそれでも本書で邦訳は打ち切りになった訳だ。残念ではあるが、ヘイスティングスの周辺の状況に関して当人もその周囲の人物も、そしてファンの読者もほっと一息できるクロージングで本作のラストをまとめており、そーゆー意味ではこのタイミングでおしまい、というのも悪くなかったとは思う。 87分署やマルティン・ベックものの流れだけど、もっと外連味を押さえて毎回手堅く楽しませてくれる、良質の警察小説シリーズだったとは改めて思う。最後に残った未読のシリーズ第10作目もそのうちいつか楽しむことにしよう。 評点は0.25点ほどオマケ。 |