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ミステリの祭典

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ジャマイカの墓場

作家 ジョン・ラング
出版日1980年02月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2025/03/17 08:16登録)
(ネタバレなし)
 ジャマイカのキングストン。現地に来てから14年目になる39歳のプロ潜水夫ジェイムズ・マグレガーは、海上保険調査員アーサー・ウェインと名乗る男から依頼を受け、つい昨日沈んだばかりのヨット「墓穴入り号」の海中探査を頼まれた。鮫が出る海域ということで高めの料金を請求したマグレガーは、ウェインの指示で、墓穴入り号から沈没前に脱出した船員や乗員の証言を聞き、先に情報を得る。だが、昨日沈んだ事故船の案件に、あまりにも早く保険会社が動き出したことに違和感を抱いた。不審を抱くマグレガーは、そのままある事件の渦中に、巻き込まれていく。

 1970年のアメリカ作品。
 ラング名義の第7長編。
 Amazonの書誌データが例によってヘンだけど、当方の目の前にある本は昭和47年8月刊行の初版。
 ポケミスで150ページちょっとというごく薄めの作品で、まるで往年の「別冊宝石」か日本語版マンハントの中盤以降に掲載された中編作品みたいな読み応え。つまり紙幅の少ない割には、意外に歯応えがあった。
 もちろん、小説の厚みをじっくり味わうボリューム感などはないけど、ピリリと来る描写、その手の作劇・演出の仕込みが存外なほどに用意されている。
 小味な作品なんだけど、もっと若い頃に読んでいたら、ごく軽度のトラウマになったかもしれないというか。

 翻訳を担当した浅倉久志の訳文は当時から好評だったみたいだけど、たしかにスムーズかつ、それぞれの登場人物の芝居をベストの形で引き出したような叙述が最後まで心地よい。ラストは(中略)だねえ。
 薄いけど、短いけど、ラング名義の作品の中じゃ、かなり練度の高い仕上がりだろう。いや、いい意味で佳作~秀作のスリラー。
 評点はこの数字での上の方。

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