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ミステリの祭典

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遅れた時計

作家 吉村昭
出版日1990年01月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 斎藤警部
(2025/02/26 02:00登録)
以前に同著者の別短篇集を評した時も似たようなこと書きましたが、そのまま行けば充分ミステリになりそうな素材を、ミステリになる一歩半手前で静かに踏みとどまったような、或る種のもどかしさが良い短篇集。 日常の優しいサスペンスとでも言いますか。

◇水の音:職業柄音に敏感な青年は、その特性がきっかけで、訳ありの子持ち女とねんごろになる。子にも懐かれ、一緒になってもいいかと青年は夢想する・・
◇駈落ち:訳あって故郷を棄てた男女が、再び訳あって故郷に戻るが・・
◇笑窪:明朗で異様なほど屈託の無い子持ちの美女と、男は再婚を考えた・・
◇蜘蛛の巣:予備校生の甥が、中年の女と同棲していると知った男は、二人を離れさせようとして・・
◇オルゴールの音:同族経営の中企業に迎えられた末っ子の弟は文学志望。 社内でちょっとした事件が起こり・・
◇遺体引取人:嫂(あによめ)が、男と情死した・・・・
◇遅れた時計:水商売から足を洗い、妻に先立たれた初老の男と結婚した四十路の女。 だが、或ることが原因で・・
◇十字架:小樽にて二十年前の米兵の遺体が発見され、母国よりその母親が訪れた。 ところが土地の人々の様子がおかしい・・
◇予備校生:スリの病癖に悩む予備校生は、法に裁かれる事を望んだ・・
◇歳末セール:デパートの万引き防止保安員を務める女が、或る日出遭ったのは・・

どの作も、クロージングの文を殊更にさり気なくしようとしてる風で、ちょっと鼻に付かなくもない(笑)。 個人的にそこだけ小さなキズですかね。 でも総じて悪くない短篇集です。

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