(2025/07/28 17:47登録)
(ネタバレなしです) 1994年発表の久我京介シリーズ第5作の本格派推理小説です。久我は亡き妻の妹夫妻が事故死したことを知らされます。状況には謎めいた不自然さがありますが久我が病気入院中ということもあってすぐに謎解きという展開にはなりません。中盤になって新たな事件が起きてこちらがメインの謎解きになります。分厚いカーテン越しで見えないはずの被害者をどうやって正確に射殺(厳密には2発撃たれて1発が命中)したのかという銃殺トリックに挑戦しており、ジョン・ディクスン・カーの「震えない男」(別題「幽霊屋敷」)(1940年)のトリックがネタバレされていますのでまだ未読の方はご注意下さい。犯人当てとしては平凡な出来栄えですが、トリックについては細かいところまでフォローした推理説明になっています。光文社文庫版の巻末では「久我がライフワークの『トリック百科事典』の完成もほぼメドがついたので(中略)アマチュア探偵として活躍しますので、いっそうの声援をお願いします」とまだまだ創作意欲があるようにコメントしていますが、結果的に本書が藤原宰太郎(1932-2019)の小説最終作となりました。
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