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ミステリの祭典

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狐小僧、江戸を守る

作家 柿本みづほ
出版日2022年11月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 猫サーカス
(2025/02/13 19:07登録)
時は江戸。上野の禅寺・太福寺で住職と暮らす十四歳の弥六は、妖怪と人間の間に生まれた、いわゆる半妖の子だ。弥六の父・白仙は、七年前に突然妖怪たちを引き連れて江戸を襲撃し多くの人命を奪った、江戸で語り継がれる「白仙の乱」を引き起こした妖狐である。それまでは、幕府と盟約を交わし、陰ながら江戸を守る存在だったはずなのに。この事件以降、江戸の人々は妖怪を恐れ憎むようになった。人間と妖怪双方の血を引く者として、成すべきことは何か。力持ちだが、あとは何の変哲もない若者とみられていた弥六は、白仙の残した禍根と、人間と妖怪の間に横たわる溝を埋めるべく、狐面を被り、カラスの姿で暮らす烏天狗の黒鉄をバディとして夜空から江戸を見廻っているのだった。狐面は、いつしか狐小僧と名付けられ義賊として町人たちの人気を集めることになる。本書は、短編四編で構成されていて、いずれも人間と妖怪が感情の表裏であることが物語の肝となっている。妖怪はみな、元は神であり、それは人間が創り出したものである。人間が畏れと敬いを忘れ、神を矮小なものへと貶めたことが妖怪を生み出したのだ。物語が進むにつれ、人間と妖怪の溝が少しずつ縮んでいくが、再び人間と妖怪がともに平穏に募らせる世を創ることが出来るのか。魅力的なキャラクターが多数登場するが、最後の一編で「妖怪はもちろん人間すらも信ずるに値しない」と言い切る孔雀組の隠密同心・南條明親が登場する。宿敵の登場をラストに持ってきたということは、シリーズ化をきたしても良いという事だろうか。

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