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ミステリの祭典

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プリンシパル

作家 長浦京
出版日2022年07月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 パメル
(2025/02/08 19:23登録)
関東最大級の暴力団の組長の娘として生まれた水嶽綾女が主人公で、戦後日本の闇を虚実取り混ぜる形で克明に描いたノワール小説。
教師だった綾女が、父が亡くなり不本意ながらも後継者となった直後に起きた凄惨な事件で腹を括る。暴力団組織間の抗争、GHQの思惑と不良軍人の思惑、政治家たちの欲と陰謀といった闇のなか、己の死をどこかで願いつつ突っ走っていく。戦後の動乱期における国の政界と裏社会の癒着ぶりが実によく調べ上げられているし、女の身で暴力団組織を継がざるを得なかったピカレスクロマンとして読み応え十分。
フィクションであるにもかかわらず、ここに描かれたようなやり取りが実際にあったのではないかという錯覚すら覚えてしまうのは、綾女が過酷な世界を生き抜く生身の女性として物語の中で息づいているからだろう。綾女の報復手段は、卑劣なもので彼女に感情移入することは難しいが、その存在感は説得力を持っている。

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