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ミステリの祭典

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『高慢と偏見』殺人事件
ダーシー&ティルニー

作家 クローディア・グレイ
出版日2025年02月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 nukkam
(2025/07/21 23:12登録)
(ネタバレなしです) 英国のP・D・ジェイムズにジェイン・オースティンの「高慢と偏見」(1813年)の後日談にミステリー要素を絡めた「高慢と偏見、そして殺人」(2011年)という作品がありますが米国のクローディア・グレイ(1970年生まれ)は殺される被害者に不満があったそうで、それが2022年発表の本書の執筆動機だそうです。「高慢と偏見」だけでなく「分別と多感」(1811年)、「マンスフィールド・パーク」(1814年)、「エマ」(1815年)、「ノーサンガー・アビー」(1817年)、「説得」(1818年)の全主要作品の結婚カップルを登場させています。但し「ノーサンガー・アビー」のカップルは序盤の顔出しだけで、舞台となる屋敷には来ないのがオールスター出演としては画竜点睛を欠いた感もありますけど。嵐の山荘状態の屋敷で夜中に殺人が置き、容疑者たちのアリバイがあやふやという設定はジェイムズ・アンダースンの「血染めのエッグ・コージイ事件」(1975年)を連想します。本格派推理小説の謎解きの密度ではアンダースンに劣り、ジェイムズに勝ると思います。事件の影響による疑心暗鬼や不安を丁寧に描いて人間ドラマを重視しているところはもしかしたらオースティンの作風を意識しているかもしれませんが、私はオースティン作品を読んでいないのでパスティーシュとしてよくできているかは評価できません。オースティンのファン読者にこそお勧めしたいところですが、大好きなキャラクターが殺人容疑者になっている設定に抵抗を感じる読者もいるかもしれません。

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