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ミステリの祭典

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あつかましい奴
アル・ウィーラー警部

作家 カーター・ブラウン
出版日1961年01月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2025/01/15 07:45登録)
(ネタバレなし)
 1960年。カリフォルニア(本作中の表記はカルフォールニア)のパインシティ。夜の酒場でブロンド娘をくどいていた「おれ」ことアル・ウィーラー警部のすぐ側で、見知らぬ40歳代半ばの男が急死した。実は男は、ウィーラーになにか相談があると連絡を取ってきた弁護士ウォーレス(ウォーリイ)・J・ミラー当人だった。ミラーの死因は当初心臓発作と思われたが、本当はクラーレを用いた毒殺らしいとわかる。ミラーは妻と愛人に、等分に多額の遺産を託すつもりだった。ミラーの共同経営者の弁護士バークリイから情報を得るウィーラーだが、捜査を続ける彼の前に複数の美女が現れ、死体の山が築かれる。

 1960年のクレジット作品。ミステリ書誌データサイト、aga-searchによると、ウィーラーものの第15長編。この次の第16長編が、あのメイヴィス・セドリッツとの共演編『とんでもない恋人』。

 大昔に読んでいる長編だが、例によって事件も犯人もミステリの仕掛けもすっかり忘れてた。ただしポケミスP74のお笑い場面、ウィーラーが入ったレストランで、仕事に多大なストレスを抱えた従業員に八つ当たりされるギャグだけは憶えていた。むろん、そのギャグがこの作品のものだということは、ま~ったく失念していたのだが。

 Twitter(現Ⅹ)などでウワサを拾うと<なかなか犯人が最後までわからない><ちょっとひねった作品>という主旨の声もあるが、なるほど残りページが少なくなっても、どうにも事件の構造は露見しない。最後の最後で、ああ、そういう仕掛けか、と判明し、部分的にはこっちの推察もアタリであった。
(ちょっとだけチョンボかもしれない真相だけど、まあアリかな。)
 犯人がわからずに音をあげ、ウィーラーに事件解決を直球で請願するレイヴァーズ保安官の図は、ちょっと印象に残った。

 中盤~後半で、暗黒街関係の人間と渡り合って窮地に陥るウィーラーだが、正当防衛で相手を(中略)。そのあとの対処の描写などなかなか鮮烈。グレイゾーンの行動にも冷静に踏み出せる今回のウィーラーの描写がいい。
 お笑いシーンは少な目(さっきのレストランの場面以外は)だが、お色気描写やベッドシーンに続く箇所は多く、たぶんウィーラーものの中でもゲストヒロインの多い方。
 久々のこの作者の作品で、とりあえずこれでカーター・ブラウン欠乏症に一息つけた。またそのうち、近々読むであろう。

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