寝煙草の危険

作家 マリアーナ・エンリケス
出版日2023年05月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 YMY
(2025/01/07 21:35登録)
つきまとう赤子の幽霊、湧水池に祀られる謎の聖母、貧しい老人の呪い、民間魔女、悪魔憑き、都市と古いホテルに跳梁する子供や女の霊といったスタンダードな怪異に加え、心音への執着や屍肉食などの異常心理をモチーフに、個が抱くそれぞれの不安や疎外感を恐怖へと結晶化するのみならず、アルゼンチンを主とするスペイン語圏社会のさまざまな問題をも浮かび上がらせる手つきが見事。
中でも出色なのは、失踪した子供たちが突如大量に当時のままの姿で還ってくる「戻ってくる子供たち」と、少女たちのウィジャボードが軍政下の恐怖政治を映し出す「わたしたちが死者と話していたとき」。社会という構造がはらむ大きな恐怖と、その中で生きる個人の小さな恐怖が融合している。

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