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ミステリの祭典

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月の夜は暗く

作家 アンドレアス・グルーバー
出版日2016年02月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 E-BANKER
(2024/12/31 13:37登録)
「夏を殺す少女」は確かに読んでいた。
ただ、明確に覚えているかというと、「うーん」・・・という感じではある。ヨーロッパ大陸に跨った作品だったよなあーって、曖昧!
そんな作者の長編を再度手に取った。2012年の発表。

~「母さんが誘拐された!」。ミュンヘン市警の捜査官ザビーネは、父親から知らせを受ける。母親は見つかった。大聖堂で、パイプオルガンの脚にくくりつけられて。遺体の脇には黒インクの缶が。口にはホース、その先には漏斗が・・・。処刑か、なにかの見立てか? ザビーネは、連邦刑事局の腕利き変人分析官とともに犯人を追う。そして浮かび上がったのは、別々の都市で奇妙な殺され方をした女性たちの事件だった。「夏を殺す少女」の作者が童謡殺人に挑む~

プロットや各種の道具立ては実に魅力的である。
なにしろ、童謡の歌詞のとおりの見立て殺人なのだから。国内の新本格やその後の数多の本格ものでもなかなかお目にかかれないテーマだ。
本筋とはあまり関係ないけれど、この童謡がなかなか残酷。よくもまあここまでやるなあーというほど残酷性が際立っている。もしかしてドイツの国民性?

で本筋なのだが、主に三つのストーリーが冒頭から交互に進行していく。ただし、時間軸はねぇ。そこはいろいろと含まれているわけです。
プロットとしては、サイコ的な真犯人に焦点を当てたサスペンスの色合いが濃くて、フーダニットの興趣などは途中から放り投げられたようなところはある。というか、中盤にはほぼ特定されてしまう。
そこはある意味現代的にも見えるけど、個人的には残念な部分。

もう一つの読みどころが、主人公ザビーネとコンビを組むS.スナイデル(このSが大事らしい)。コイツが相当なクセ者。当初は交わることはないと思っていた二人が、徐々にコンビニなっていく過程もなかなか。

全体的には十分水準以上の面白さを感じることはできた。
でも、結構長いよ!

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