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ミステリの祭典

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暗黒大陸の怪異

作家 ジェームズ・ブリッシュ
出版日不明
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2024/12/14 15:48登録)
(ネタバレなし)
 20世紀の半ば。コンゴのグントゥー地方。同国に12年暮らし、土地の原住民ともすっかり親しくなった「クサンディ」ことアメリカ人キット・ケネディーは、駐在事務官のジャスタン・ルクレルクを介してある依頼を受けた。それは何日も道程の日数がかかる山奥の秘境へ、男女4人からなるベルギーの遠征隊を案内するというものだ。船で川を下った秘境の奥の山地には謎の怪物「モケレ・ムベンバ」が住むという言い伝えがあった。この依頼を受けたキットは友人である現地人ワッサビ族の酋長トンプとともに、遠征隊を率いて目的地に向かう。だが少し気がかりなのは、遠征隊の隊長オットー・スタール以下の面々が旅の目的は医療関係であるとし、それ以上の詳しい内容を教えないことだった。

 1962年のアメリカ作品。
 作者ジェームズ・ブリッシュの作品は初読みで、評者みたいな昭和の世代人にとってはまず何より『宇宙大作戦(スタートレック)』のノベライズ路線の著者としてなじみ深い人だった(ほかにもオリジナルSF『悪魔の星』とか有名だけど)。
 創元文庫の初版は1968年8月で、評者は翌年3月の再版で読了。
 
 それで本作は、完全な秘境冒険もの+怪獣(正確には恐竜?)もの。
 本作作中では「モケレ・ムベンバ」表記され、その名前が「登場人物」一覧にも載ってる(これ、人間じゃないけど)モケーレ・ムベンベ。
 これが、アフリカの奥地にいるとされるネッシーみたいな恐竜型UMAだということは、2020年代の今日び、小中学生だって知ってる子は知っている。
 うむ、ちょうど10年前の深夜アニメ『未確認で進行形』劇中のネタだ(笑)。

 創元文庫の分類がSFなんだけど、内容からすれば帆船マークでもよかったんじゃないの? とも思えるし(まあ『失われた世界』もSFマークだったしな)、何より表紙のビジュアル(他作品と共通)が宇宙の最果てのベムみたいな連中なので、こっちは長い間、この作品は、なかばスペースオペラ的な内容なのかとも思ってた(なんせ作者が前述のとおりに『宇宙大作戦』のヒトだし)。
(さらにもう一件。創元文庫の扉あらすじではなんか時代設定が20世紀の初めと思わせるように書いてあるけど、本文P50で1940年代の史実の話題が出て来るので、実際にはそれ以降の20世紀中盤の物語だ。)

 総ページ200頁前後の短い紙幅で、細部の書き込みの少ない旧作なので話はスイスイ進む。遠征隊の秘められた目的も察しがつくし、あまり深みのない内容ではあるが、さすがに謎の怪獣が出て来るところはちょっとワクワク。いやまあ、こっちはそれを期待して読んでるのだが。
 終盤は秘境の非文明社会と、そこに分け入ってくる現代文明との距離感みたいな王道のテーマとなり(ここまでは書かせてください)、そこにどう主人公キット(と仲間たち)が決着をつけるのか、が興味となる。

 本当に直球で、正に良くも悪くも王道の秘境もの+怪獣(恐竜)小説。
 人喰い人種とかも堂々と出て来る内容で、いろんな意味で2020年代の現代以降の復刊はたぶん絶対にありえないだろう。タマにはこういうのもよろしい。

追記:作中で現地人が「旦那」を「プワナ」とルビをつけて呼ぶ描写があり、小林信彦の『大統領の密使』のボンド少年を思い出した(笑)。本書の原文が正確にどうかは知らないけれど、もしかしたら日本語での「プワナ」は南洋一郎のインフルエンスとかあるのかしらねえ。いや、フツーにただの現地語だろ、と言われたら、それまでだが(汗)。

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