繭の季節が始まる |
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作家 | 福田和代 |
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出版日 | 2022年02月 |
平均点 | 5.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 5点 | 猫サーカス | |
(2024/12/13 18:19登録) 新型コロナに端を発するウイルスの相次ぐ世界的流行に対抗すべく、日本では政府が定めた期間は外出が禁じられ、巣ごもりが強制される「繭」というシステムが生まれた。とはいえ、その期間でも「繭」の外で働かなければならない人々もいる。警察官の水瀬アキオもそんな一人であり、互いに感染の可能性がある人間の同僚とは仕事ができないため、期間中は咲良と名付けられたAI搭載の猫型ロボットを相棒としている。限られた職種の人間以外は外出しないのだから、「繭」の期間は犯罪が少なくて警察官も暇だろうと思いきや、不審な状況での遺体の発見、食品工場への侵入事件など、アキオと咲良は様々な出来事に遭遇する。「繭」への反対運動を繰り広げる者もいるし、「繭」から疎外されたり「繭」の期間延長を告げられたりして精神のバランスを崩してしまう人々もいる。ウイルスの脅威に脅かされた時、人間の社会はどう変わり、人間の本質のどこが変わらないままなのかを見据えた小説であり、諦観の中からわずかな希望の光が射すような不思議な読み心地が印象に残る。 |