第六実験室 |
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作家 | 佐野洋 |
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出版日 | 1976年01月 |
平均点 | 7.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 7点 | 人並由真 | |
(2024/11/21 06:14登録) (ネタバレなし) 大財閥「鳥羽コンツェルン」の当主・鳥羽辰彦と大学時代の親友だった、「千代田女子大」の教授・春部良介。犯罪学の研究で高名を馳せた45歳の春部は、その鳥羽の後援を受けて、鳥羽コンツェルンの一角である大手企業「中央電機」の分室的な組織の形で「中央完全犯罪研究所」を開設した。十戒の第六条「汝、殺すなかれ」にちなんでのちに「第六実験室」の別称を得る同所は、殺人を含む完全犯罪の探求にまで至る組織だ。中央電機の秘書室から同研究所に移籍した25歳の宮村整子は、春部の助手の立場となり、やがて民間から4名の研究員を迎えるが……。 角川文庫版で読了。 以前からはっきりした内容も知らぬまま<佐野作品の中では結構面白い>という世評のみ何となく聞いていたような一冊で、少し前に改めて興味が湧いて、ネットでそんなに高くない古書を購入してみた。 乱歩の中短編にありそうな、犯罪に憑かれた奇人譚を想起させる設定で開幕するが、最終的になかなかトリッキィな仕立てのミステリに着地する技巧派作品。 (つーことで中身の具体的なアレコレに関しては、あまり言えない・笑。) 最後までそこまで上手く事が運ぶかな、と思わせる箇所もないではないが、創元の旧クライム・クラブで出会えそうな変化球ミステリ感はとても楽しい。 登場人物もそんなに多くないので、スラスラ読めるとは思う。 佐野作品のベストワンにはしたくないし、しなくてもいいとは思うがオールタイムで上位5本を挙げろというのなら、その一角には入るんじゃないの? とも思う。いやまだ、評判が高い作品で未読なのもいくつかありますが(汗・笑)。 少なくとも作者の諸作の幅広さ、懐の深さ、を知るためには、確実に読んでおいた方が良い一冊だとは思うぞ。 |