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ミステリの祭典

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ジャングル・キッド
元私立探偵マット・コーデル(カート・キャノンの別バージョン)もの ほか

作家 エヴァン・ハンター
出版日1960年01月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 人並由真
(2024/11/18 22:43登録)
(ネタバレなし)
 エヴァン・ハンターの、同名義での米国本国での5冊目の著書で初の短編集。原書「The Jungle Kids」(1956年)に収録された前12編の短編をそのまま翻訳、収録してある。ちなみにこれ、「クイーンの定員」の第114番目。

 以下、簡単に各編のメモ&感想。

「初犯」……押し込み強盗を犯して逮捕され、尋問される非行青年の話。平凡な人々の人生のすぐ隣にある非日常を絶妙な語り口で伝える話で、最後の幕切れが……。秀作。

「明日は誰奴だ」……暗黒街の殺し屋の日常のワンシーン。「初版」と続けて読んで、もしかしたらこの一冊、かなり手応えのある短編集かも? と期待を抱かせてくれる出来。

「ちいさな事件」……教会に遺棄された赤ん坊の死体。警官を主人公にした警察小説だが、しみじみとした人間ドラマ。

「ほっといてくれ」……警察の目をかいくぐり、秘匿していた麻薬の回収をしようとする麻薬患者のとある苦闘。都会の一角での妙なロケーションの設定が面白い。

「後をつける者」……ストーカー(今で言う)につきまとわれる? 美人妻。赤川次郎のそこそこ出来がいい短編みたいな味わい。

「壁」……『暴力教室』の路線の学園・不良少年&青年教師もの。白にも黒にも大別されない人間観は、普遍的なものがある。

「カモ」……少女の強姦殺人事件。その容疑者を弁護する、友人の弁護士。これはまあ、良くも悪くも……のスタンダードな。

「死にざまを見ろ」……非行少年から警官への銃撃。短い紙幅の中に緊張感が凝縮された一編。

「ジャングル・キッド」……「壁」と並ぶ本書中でもう一本の青年教師&飛行少年もの。「壁」よりもストーリーの起伏を感じるし、物語の決着もまとまっているが、その分、ちょっと心へのフックが弱い……かな?

「殴る」……酔いどれルンペン元探偵カート・キャノンの旧名マット・コーデルもの。ポケミス&HM文庫『酔いどれ探偵街を行く』に収録された正編の最終編「街には拳固の雨が降る」と同一の内容だと思う。

「暴発」……暴発事故で奪われたひとつの命。その悲しみの中で……。これも、きれいに? まとまった一編。
 
「ラスト・スピン」……非行少年同士の対立に始まる、ロシアン・ルーレット。その緊張を楽しむ二人。ラストの余韻が……。

 全編、総じてなかなか面白かった。日本版「マンハント」ほかで先に読んだような作品もいくつかあるが、ハンターの筆の達者さを感じる。半世紀以上前の旧作なので、一部、ある程度、手の内が透けてしまうのはまあ。でもなんかミステリ的に弱くても、どこか印象的な場面なり、登場人物のキャラクター描写なりがある。良質の短編集だと思うぞ。

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