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ミステリの祭典

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鼻行類

作家 ハラルト・シュテュンプケ
出版日1987年04月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 クリスティ再読
(2024/11/18 09:04登録)
ミステリかといえば怪しいが、サイエンス・フィクションには間違いないので取り上げようか。評者も大好き、ファンが多い本。

たくさんの鼻で立ってゆったりと
ナゾベームは歩く
自分の子どもたちを引き連れて

とドイツのユーモア詩人、クリスチャン・モルゲンシュテインが描いた詩から発想し、生物学者が「鼻で歩く哺乳類」というアイデアで作り上げた生物についての、系統的なパロディ学術論文である。太平洋の孤島ハイアイアイ群島で独自の進化を遂げた哺乳類である。その環境に適応して多彩な形態と生態をもち...いや奇想天外な形態と生態を誇る。
・大きな耳を羽ばたかせて飛行するダンボハナアルキ
・鼻汁を滴らせて釣りをする川辺に佇むハナススリハナアルキ
・鼻で飛び跳ねるトビハナアルキ
・四本の丈夫な鼻でのし歩くモルゲンシュテインオオナゾベーム
などなど、奇抜な生物が一つの進化系統として学術的に詳細に記述されていく。

中には哺乳類でありながら固着生活を営むもの、さらには寄生生活を送ってプラナリアと誤解されるような退化を遂げた鼻行類も存在する...それらがこの島では系統的に残されているために、プラナリアから空飛ぶダンボまでを、連続的にたどることのできる「同じ形質」の多彩な適応として描かれて読者を説得するのである!

まさに「手の込んだホラ話」として、SFとしか呼びようがない(苦笑)

実はこのハイアイアイ群島は戦時中に日本軍の捕虜収容所から脱走したスエーデン人によって発見されたそうだ。まさに日本の近海に存在する....のかもよ。ただし秘密の核実験に伴う事故により、ハイアイアイ群島は消滅し、鼻行類は絶滅したとされている。一部の標本が博物館に残されている、という話はあるようだ。

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