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ミステリの祭典

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サリー・ダイヤモンドの数奇な人生

作家 リズ・ニュージェント
出版日2024年08月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 HORNET
(2024/11/16 21:48登録)
 町はずれで父と2人で孤立して過ごす43歳の"変わり者"サリーには6歳までの記憶がない。ある日父が病気で亡くなり、言いつけどおり遺体を焼却炉で焼いたところ、警察が駆けつけて大騒ぎに。マスコミが殺到する中、サリーは父が残した手紙を開く。そこにはサリー自身が知らなかった、凄惨な事件の記録が記されていた―

 凄惨な幼少期を過ごしたことにより、パーソナリティ障害を抱えているサリー。「適応障害を抱えているから、不適切なことを言ってしまう」と自分で相手に説明しながら、社会に順応しようと努力を重ねている姿をいじらしく感じてしまい、とても好感がもてる。一方物語は、現在と交互に章立てされてサリーの幼少期に起きた誘拐・監禁事件のストーリーが並行して描かれる。サリーの母親であるデニース・ノートンがコナー・ギアリーという男に誘拐され、監禁される中でサリーを産んだ。実はその前にデニースは男の子も産んでおり、その子・ピーターは父コナーに大事に育てられていた。ピーターを一人称として描かれる過去の章により次第に物語の輪郭を明らかにしていく展開は妙で、非常に面白かった。

 唯一不満なのは…玉虫色のラスト。ここまで来たのなら…着地点を明確に描いてほしかったなぁ。

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