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ミステリの祭典

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おがみむし

作家 遠藤徹
出版日2009年09月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 メルカトル
(2024/11/15 22:42登録)
「これが恋というものなのだ」。男は私の心臓を丸呑みにして、そう言った。虜になった私は、11名の女と共に僕となった。ところが13番目の少女だけは違っていた。なぜなら彼女は……。名手が放つ耽美なるホラー!
Amazon内容紹介より。

表題作は上記の通りですが、短いです。まあこれはホラーと言えばホラーでしょう。解説によれば「メタファーが現実に転化する世界」。正に言い得て妙です。さらに問題作とも言える本命の長編『くくしがるば』に関しても、この解説者は的確にカオス状態の作品を丁寧に解きほぐしてくれています。大したものだと思いました。

単行本で刊行された時のタイトルは『くくしがるば』でしたが、文庫化の際にどちらかと言えば分かり易い『おがみむし』としたそうです。その方が売りやすいという理由でしょうが、本来なら逆でしょう。飽くまでメインは『くくしがるば』の方ですので。こちらは言葉遊びが過ぎる様で、真面に書けばもっとスッキリしたのではと思います。講談の様でもあり落語の様でもあり、作風とマッチしているのは確かなので、一概に読み難いなどとは言えませんが。
ストーリーとしてはラノベ風で、それを妙な言い回しで撹乱しながら悟らせない様な無駄な力を使っているのが見えてしまった読者は、作者の罠に嵌っているのでしょう。そのような事態は想定内だったのだろうと思います。取り敢えず、一度読んだだけでは十分に理解が及ばない面がありつつも、謎解き小説としても成立している所は評価できると思います。

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