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ミステリの祭典

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不良少年

作家 結城昌治
出版日1971年01月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2024/11/15 18:43登録)
(ネタバレなし) 
 1970年代の初め。高校を休学し、一方でシンナー遊びで酩酊する非行にふける17歳の少年・澄川隆は、たまたまの成り行きで暴力団・天神会傘下のナイトクラブ「スターパレス」でボーイのバイトをしていた。そんな少年は支配人・大竹が閉め忘れた金庫の中に、自動拳銃を発見。それをひそかに隠匿し、職質してきた警官・椿を争った末に射殺してしまう。天神会の面々が少年の行方を追う一方、かつて家庭裁判所で澄川隆に縁があったひとりの中年調査官も彼の軌跡を追い始めた。

 中公文庫版で読了。大昔に元版が新刊で出た際にミステリマガジンの書評の俎上に乗り、それが何となく、しかしどこかしっかりと何十年もの間、心のどっかに引っかかっていた。レビュアーはたぶん若き日の瀬戸川猛資で、書評のなかの一文、どこかリュウ・アーチャーを思わせる調査官……という主旨の記述が気になったんだと思う。実際にこの調査官は本作のもうひとりの主役といえるポジションだが、その本家アーチャーの透明性をなぞるように、最後まで名前も出ない。

 で、まあ5年位前からややホンキで読みたくなって、手頃な古書を(できれば元版で)探していた。
(もしかしたらすでに買っているかもしれないが、だとしたら例によって家の中から見つからない。)
 それで半年位前に、高田馬場の古書店で廉価で文庫版を入手。

 一昨日から読み始めたが、う~ん、あれこれ思い入れ? が過剰すぎたためか、今一つであった感じ。
 円熟した作者の文章に一定の格調は感じるが、機軸の主題が重いシリアスな青春クライムノワールなので、読んでいてメンタル的に少し厳しい。まあそれはもちろん想定内ではあるのだが、何より2020年代の今読むと、話の流れが類型的に思えて広がらない。良くも悪くも定食の青春ノワールという味わい。
 70年代初頭の都内の、ヒッピー文化が廃れたデカダンな時代性は感じないでもないが、そういう興味だけで読むのはツライよねえ。

 どっかの奇特な商業原稿の依頼がきて、お金あげるからこの作品を語れとかでも言われたら、自分にウソをつかないように言葉を選びながらホメるところをいくつか探すことはできそうな気もしないでもないが、素で読んで積極的にいいとは言いにくい一冊であった。
 まあ人を選びそうな作品なので、もしかしたらもっと結城昌治作品の系譜に親しんだ人とかなら、高い評価をするかもしれませんが。

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