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ミステリの祭典

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ダンシング玉入れ

作家 中山可穂
出版日2022年05月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 SU
(2024/10/09 21:04登録)
主人公は無敵の殺し屋。彼のターゲットは、宝塚歌劇団月組トップスター・三日月傑。主人公が三日月のことを尾行すればするほど、驚くのは彼女のストイックな生活。この中でどうやって殺しを実行するのか。そして彼に殺しを依頼した犯人は一体誰なのか。
読みどころはなんといっても、そのストイックな青春の在り方である。若い女性のイメージに相応する余暇をかなぐり捨てて、全身全霊で舞台という名の青春に没頭する。その姿は、まるでオリンピックに邁進するアスリート姿と同じようだと、主人公の殺し屋は驚きをもって語る。
トップスターの三日月もまた、殺し屋に狙われるという数奇な運命を抱きながら、ある意味「命懸け」つつ、舞台へ向かう。宝塚がテーマの小説という華やかな舞台を描いた物語を想像するかもしれないが、実のところはスターが舞台上で見せる姿の裏にある、ストイックに自分を追い込む日々を切り取っている。宝塚に詳しくなくても、鮮やかなノワール小説として爽やかな青春小説として楽しめる。

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