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ミステリの祭典

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蒼いくちづけ

作家 神林長平
出版日1987年07月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 糸色女少
(2024/10/04 22:03登録)
月の都市で、テレパスの少女ルシアが裏切られて死んだ。彼女の抱いた激しい憎悪、地球にも届くほどの強い残留思念が、やがて周囲に災いをもたらす。テレパスの関わる事件を扱う無限心理警察の刑事OZは月へと向かう。彼女の魂を救うために。
テレパス同士のコミュニケーションについて語りつつ、そこから現実認識の変容という作者らしいテーマに踏み込まない。あくまでも事件の解決を中心に据えた、ストレートなSFミステリである。
怨霊を鎮めるようなホラーめいた物語を、SFの枠組みで描いてみせる。刑事の心情を綴る文体にも、クライマックスのOZの所作にも、ロマンティシズムが溢れ出る。短い中に、緊張と悲哀を込めた作品だ。優しさの滲む結末も忘れ難い。

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