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ミステリの祭典

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猛獣狩(ハンティング・サファリ)殺人事件
酒島章警視シリーズ

作家 嵯峨島昭
出版日1980年02月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 虫暮部
(2024/10/18 10:58登録)
 猛獣狩小説を商業出版する便宜としてミステリに仕立てた、と言う感じ。流れを無視して真相が唐突に表出するし、それがアレでは復讐ハンティング行が台無しじゃないか。“曖昧な記憶” の扱いは、新本格以降に比べると捻りも何も無いが、そのシンプルさが意外に新鮮。

 一方で、ミステリ以外の部分は読み応えがある。
 そもそも狩猟小説で文壇に出て来た人だから、これは原点回帰(か?)。
 料理に関しては食通ぶりがあまり発揮されてはいない。濡れ場も設定の必要上挿んだと言った程度でこれは敢えて封印したのかも。
 アフリカ現地人と日本人との格差などが差別的な書き方ではある。それとも寧ろ差別的だと感じることこそ差別意識の反映なのか。とは言え戯画的なンガンゴのようなキャラクターが美味しいのは確か。“大地の上で自然に還れ” 的な読み方は流石に安直だろうが、まぁ80年代の作品だからね……。
 暑苦しい背景の下、登場人物は皆、生き生きとぶつかり合ってドラマを演じている。狩猟に全く共感など持てずとも、まんまと読まされてしまった。あからさまな美文ではないが、行間の空気感で引っ張る手腕は芥川賞の面目躍如(か?)。

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