home

ミステリの祭典

login
レギュレイターズ
リチャード・バックマン名義

作家 スティーヴン・キング
出版日1998年03月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 Tetchy
(2024/10/08 00:33登録)
本書は『デスペレーション』の姉妹編。しかし本書は1985年にガンで死亡したとされるリチャード・バックマンが遺した原稿を1994年、彼の妻が見つけ、それを基に手直しを加えて―という設定で―発刊された作品である。

姉妹編と云うのはキング名義で発表された『デスペレーション』と同じキャラクターが登場するからだが、キャラは同じでも役どころが異なっているのだ。
ただし全ての登場人物が別設定というわけではなく、中には同じ役柄のキャラクターもいる。作家のジョン・マリンヴィルと元獣医のトム・ビリングスリーの老人コンビがそうだ。
そして新キャラクターも数多く登場する。

本書のタイトル『レギュレイターズ』はタックに憑りつかれたセス・ガーリンが繰り返し観ている1958年公開のB級西部劇のタイトルで、映画評や台本まで挿入されるこの映画はしかし調べてみるとどうもこれはキングの創作らしい。
また物語の舞台ももちろん鉱山町デスペレーションではなく、オハイオ州のウェントワース近郊のポプラストリートである。南北に走るその通りを挟んで東西に建っている家の住民たちが彼らたちなのだ。そして物語が進むにつれて、鉱山町デスペレーションが物語に関わってくることが判ってくる。

そんな舞台と人物像を、いや配役を変えて繰り広げられる物語は6台のワゴンの乗った奇妙なキャラクターたちによる殺戮劇だ。6台の色違いのワゴンに乗っているのは発光する幽霊に軍服を着たエイリアンに灰色の肌をした無精ひげのバックスキンの猟師服を着た男、ナチの制服を着た顔が暗闇の男などなど。

こんなアニメや戯画的な怪物たちが登場するポプラストリートの人々が迷い込んでしまった世界は今でいうなら『アヴェンジャーズ』の世界に紛れ込んだようなものだろう。娯楽映画として観ている分なら痛快だが、いざあの危地の只中に放り込まれたなら、右往左往してどうしようもない絶望感に浸ってしまうことだろう。

本書は荒廃感が漂う『デスペレーション』とは違い、最後に救いがある。だからこそ私としては両者を比べた場合に本書に軍配が上がるのだ。それはつまりスティーヴン・キングとリチャード・バックマンの対決でもある。最後の最後にしてバックマンはキングに勝ったのだと思うことにしよう。

キングの“ダーク・ハーフ”であったバックマンが“死後”ようやく日の目を見た、そんな風に感じた作品だった。

1レコード表示中です 書評