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ミステリの祭典

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現代推理小説全集14ボアロー&ナルスジャック「牝狼」に併録

作家 マリオ・ソルダアティ
出版日不明
平均点4.00点
書評数1人

No.1 4点 クリスティ再読
(2024/09/15 11:03登録)
「牝狼」のやりついで。
「牝狼」自体、訳者は岡田真吉である。ミステリの翻訳もしていたが、キネ旬のコアメンバーで映画評論家として活躍した人である。というわけで、短い「牝狼」の穴埋めとして起用された「窓」も訳者は映画評論家の飯島正。作者は50年代にソフィア・ローレンが主演した「河の女」と「OKネロ」が紹介されたイタリアの映画監督である。戦前の「新青年」から翻訳ミステリ業界は洋画との結びつきが強いというのはいうまでもないのだが、こういう人脈からの紹介作品ということになる。

戦争が終わり20年ぶりにロンドンを再訪した「私」は女友達の未亡人トウィンクルと再会する。二人して訪れた画廊で発見した絵に二人は衝撃を受ける。かつて二人の前から蒸発した画家のもの、さらにはこの二人の前からまさに蒸発した忘れ得ない光景が描かれた絵だったのである。この絵の売主のもとを二人は訪れるが、女売主とその同居人女性は言を左右にして、画家の情報を明かそうとはしない...過去に一体なにがあったのだろうか?

こんな話。ポケミス風の判型で90ページほどだから、短め長編にも少し不足気味のボリューム。手法的にはミステリだけど、内容的には私とトウィンクルと画家の微妙な男女関係と、過去の人間関係を「老い」の視点から見つめ直すといったことが主眼。まあミステリ、とは呼び難い。問題の失踪画家のイタリアンな気ままダメ男っぷりにハマる男優をキャストすれば、小洒落た小品文芸映画にはなりそうなものでもある。「かくも長き不在」とかと似たテイストになるかな。

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