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ミステリの祭典

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クラーク・アンド・ディヴィジョン
日系二世アキ・イトウ

作家 平原直美
出版日2024年06月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2024/09/08 11:00登録)
(ネタバレなし)
 1944年5月。かつて1941年まではロサンゼルスで大型青果店経営を営む実業家だった日系のイトウ家は、太平洋戦争の勃発とともに財産やいくつもの市民権を奪われて収容所送りになったのち、ようやくシカゴへの再定住が認められる。「わたし」こと20歳のアキ・イトウは両親とともに、先にシカゴで暮らす3歳年上の姉ローズのもとに向かう予定だったが、現地に着く直前に知らされたのは、思いがけない悲報であった。

 カリフォルニア州出身のアメリカ人で日系三世のミステリ作家・平原直美の存在は以前にどこかで見かけ、すでに別のシリーズの邦訳も数冊あるのでちょっと読みたいと思っていた。
 そしたら今年、本作が新シリーズで始まったので、手に取ってみる。なお作品は、原文が英語で書かれている、れっきとした海外・翻訳作品である。

 500ページの厚みの文庫本で、文章そのものは読みやすいのだが、小学館文庫のこの本は書体も印刷もくっきり度が弱く、いささか目が疲れる。
 特殊な時代設定、シチュエーションで、(たまには)そういう変わった趣向のものを読みたいというこちらの興味には十分応えてくれた内容。キャラクターも結構、多めだが、この時代設定と紙幅からすればそんなにはネームドキャラが登場するわけではない。
 若い女性主人公の一人称視点で綴る、特殊な時代のなかの群像劇的な見方をするなら、フツーに悪くない出来だろう。よくいう、細部が面白い作品ではある(特に第22章の某キャラの、あ~あ……という状況に読んでいて泣き笑い、の気分)。

 ただしミステリとしては、話の構造から最後のサプライズが読めてしまった。ただ素直な決着にせず、ある意味でひとつふたつひねってあるのは、まあまあよろしい。
 すでにシリーズ第二弾が出ているそうで、いろいろとラストで気になる次作に向けたフックは仕掛けてあるので、いずれ翻訳が出れば7割くらいの確率でたぶん読むと思う。

 最後に、本当に久々にミステリを読めて良かった。
 さっさと早くまた、元の生活ペースに戻りたい(涙)。

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