(2024/09/28 19:39登録)
(ネタバレなしです) 英国のリチャード・コールズ(1962年生まれ)は英国国教会の司祭でラジオパソナリティー、ミュージシャンと多方面で活躍しています。作家としても自伝やノンフィクションを発表しているようですが、初のフィクション作品が2022年発表の本格派推理小説である本書で、主人公はやはり英国国教会の司祭であるダニエル・クレメントです。舞台は1988年の英国の村で、約500年前に建てられた教会に初めてのトイレを設置したいとダニエルが訴えますが反対する村人もいて不穏な雰囲気が漂い始めます。ミステリーの出だしとしては悪くありませんが殺人事件の被害者とトイレ問題との結びつきが弱く、また家族から「礼節がすぎて、争いを恐れて遠慮しすぎ」と評価されているダニエルが探偵役としてあまり積極的でないようにも映り、謎解きプロットが間延びしているように感じました(ダニエルより家族の方がよほど個性的です)。それなりに謎解き説明されてはいますがどうやって犯人を特定したかについては推理が弱いように感じました。ひねった動機は印象的ですが時代背景に関わるところがあるので、どれだけの読者がなるほどと得心できるか微妙な気がします。
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