(2024/08/31 17:01登録)
(ネタバレなしです) 1935年発表のロデリック・アレンシリーズ第3作の本格派推理小説で、国内では別冊宝石68号(1957年)に掲載されました(ロダリック・アリーンと表記されています)。江戸川乱歩による小伝でヘンリイ・ジェレット(1872-1948)との共作であることが紹介されており、英語表記の作者名は「Ngaio marsh & Henry Jellett」(mが小文字なのはご愛敬)となっているのですが日本語表記はなぜかナイオ・マーシュのみでした。ジェレットはマーシュの父親の友人の医師で、病気になったマーシュの治療を担当しマーシュから「Papa Jellett」と呼ばれるほどの交流があったそうです。本書での手術中の医者や看護師たちの動きの描写や薬品の知識に関する助言を与えたのではと思われます。議会で倒れた内務大臣が病院で手術を受けますが術後に死んでしまいます。他殺を主張する未亡人の求めで検視審問が開かれ、過量に使用すると危険な薬品が過量に投与されていることがわかります。派手な展開はありませんが、第14章でどのように殺害したのか様々な可能性を丁寧に検証されるなど謎解きは充実しており、古い翻訳ながらそれほど読みにくくありませんでした。解決の説得力はやや微妙な出来栄えで、特に動機に関する「狂人の論理」は話が唐突過ぎて唖然としました。余談になりますが本国でも再版時に作者名がマーシュのみ表記になってジェレットが不遇な扱いを受けることがあったらしいです(笑)。
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