東海道四谷怪談 |
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作家 | 鶴屋南北 |
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出版日 | 1956年08月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 6点 | クリスティ再読 | |
(2024/08/23 19:52登録) 夏休み納涼番組。日本3大古典ホラーって考えたら、四谷怪談と牡丹燈籠or累ヶ淵は決まりとして、あとなんだろう?雨月から何か取るか、謡曲の鉄輪かなぁ。 (あ〜そういや耳なし芳一があるか。これで決まりか) でまあ、四谷怪談のオリジナル。義士銘々伝の背景があり、世話物で浪人の貧乏話が続く。有名な伊右衛門とお岩の話を軸に、髪梳きやら隠亡堀の戸板返し、蛇山庵室など超有名シーンが連続する芝居。とはいえ、オリジナルの芝居は仏の喜兵衛とその子の小仏小平の話やら、お岩の妹お袖と与茂七vs直助の救いようがない三角関係話など、感情移入しづらい脇エピソードも多いな。 まあだから、有名な仕掛けがある怪現象の場面は、ビジュアルのショックで押し切るケレン芝居ということにもあるわけだ。そうしてみればこの芝居の真のクライマックスは、お岩が毒を飲まされて、面相が変わった状態で伊右衛門とやり取りする、自分を捨てるDV男との愛憎が暗く燃える場面、ということにもなるんだろうな。そして、その後、髪を梳いて恨み言を述べながら死んでいくあたりは事実上一人芝居になってきて、台本の話というわけではなくなる。 そうしてみると、台本で読むと怖くない(泣)歌舞伎はたとえば孝夫玉三郎で昔やった映像を少し見たけど、玉三郎が髪梳きを一人芝居で延々とやっていて、これが見せ場になってくる。 まあ気を取り直して、名作の誉れ高き中川信夫の映画「東海道四谷怪談」(1959)も納涼ついで。いやこれは江戸の夜の闇の深さを表現した映像美が強く出た作品である。かなり原作は端折っていて、赤穂浪士関連は完全にオミット。原作以上に直助(江見俊太郎)が悪党で、伊右衛門(天知茂)は優柔不断でお岩に対する情もいろいろ覗く。リアルな心理劇としてうまく再構成しているのが素晴らしいよ。 |