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ミステリの祭典

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幻想博物館
とらんぷ譚1

作家 中井英夫
出版日2009年12月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 みりん
(2024/08/16 23:12登録)
「流薔園」は夢遊病者の中でも特に程度の高い幻視者が集う精神病院。精神科の元教授が反地上的な夢を蒐集する幻想博物館として築いた一種の楽園。現代ならお叱りを受けるかもしれないほど攻めた内容ですね。1つ1つはそこまで難解ではありませんが、連作短編として他の話との繋がりを考えはじめると、『ドグラ・マグラ』を連想するほど迷宮に陥ります。
著者の毒物雑学が披露される『黒闇天女』や『チッペンデールの寝台』は傍から見ると滑稽で、図らずもコメディタッチなのが笑えます。
常識からは逸脱した愛の証しに満ち足りる『地下街』、不吉な美が生む○○愛の悲劇『蘇るオルフェウス』、車椅子と白人女の運命の出会いから流薔園送りになった経緯が明かされる『薔薇の夜を旅するとき』の3つが特に気に入りました。
怪奇幻想(妄想)小説として、夢野久作に負けず劣らずの満足感。続きも読みます。

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