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ミステリの祭典

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夢野久作全集 1
ちくま文庫 夢野久作全集

作家 夢野久作
出版日1992年05月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 みりん
(2024/08/10 21:00登録)
夢野久作が『あやかしの鼓』で中央文壇にデビューする前、童話作家杉山萠圓名義で執筆した童話が19作収録されています。この全集から夢野久作を読んでみよう!って方に待ち受けるのが『白髪小僧』かと思うとなかなか不親切な全集だと思います(笑) 『ルルとミミ』『瓶詰地獄』『死後の恋』あたりから無難に入ることをおすすめします。

『白髪小僧』はお話し好きの美留女姫が自身の未来について予言された本と出会い、次第に現実と虚構が溶け合っていく様はもはや<いつもの>です。夢という主題だけでなく、『犬神博士』のチイような性別の曖昧さというのも既に隠れテーマとして存在しており、この頃からある程度書きたいものが決まっていることが窺い知れます。プロットが複雑で、多くの謎が解明されないまま尻切れトンボのような終わり方は未完と行っても差し支えなく、失敗作でしょう。アンソロジーに収録されない理由もわかります。ちなみに挿し絵は夢野久作の自作らしい。やたらうまい…
個人的に未読の中では『オシャベリ姫』が良かった。オシャベリで貰い手がいない姫がオシャベリで痛い目に遭い、オシャベリで生涯の人を見つけるという喜劇的シンデレラストーリー。中編『豚吉とヒョロ子』は片端者同士の逃避行。トンデモ医者が出てきて掻き回すコメディ寄りの作風で、夢Qにしては綺麗にまとまっている中編の良作。しかし、再読を含めるとやはり1番は『ルルとミミ』です。乙女の本棚シリーズで出会ってから読み返すたびに評価を上げています。

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