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ミステリの祭典

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幻視者の曇り空

作家 織守きょうや
出版日2021年04月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 猫サーカス
(2024/06/29 19:26登録)
語り手の久守一は身体に触れることで、相手の眼前の光景を垣間見る「幻視」の力を持っている。大学の後輩・真野莉子との縁でホームレス支援を行うNPO法人の活動に参加している久守は、新たに活動に参加した美大生・佐伯優を偶然幻視するが、そこには刃物で切り刻まれた血まみれの死体が倒れ伏していた。折しも街では連続通り魔殺人が起こっている。佐伯が真野に興味を抱いていることを知った久守は、彼の殺人の証拠を掴むため佐伯に接近するのだが、佐伯の描く絵、その人柄に徐々に魅かれてしまう。他者の秘密を知ってしまうことで懊悩する主人公の切ないモノローグが読みどころ。友人関係を育む日常と究極の非日常である殺人行為、その双方につながる感情が一個人の人間の内にあることが、本作のサスペンスとサプライズの源泉だ。特殊なロジックを明らかにする語りこそが本書の肝だろう。

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