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ミステリの祭典

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観測者の殺人
怪人的犯罪者「鬼界」シリーズ

作家 松城明
出版日2024年02月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2024/06/19 14:44登録)
(ネタバレなし)
 人気Vチューバーの女子大生が惨殺された。謎の犯人らしき人物は、SNSで100人以上のフォロワーを持つネット利用者を今後も殺害するとの主旨の、メッセージを放つ。友人を殺された女子大生でCGデザイナーの今津唯は、事件の陰で暗躍する謎の人物「キカイ(鬼界)」の存在を探知したが。

 人間をひとつの個体システムに見立て、情報をインプットすることで目的をアウトプット(殺人などの犯罪を無自覚に誘導)させる、そんな形で他人を操る工学系の怪人的犯罪者「鬼界」シリーズの第二弾。この大ネタは版元や関係者(公認の紹介役の書評家とか)などの方も、公然と公布してある。

 とはいえ評者は実はその辺はあまり意識せず、シリーズ前作『可制御の殺人』も読んでなかったので、作者の劇中人物の描写との距離感で多少面食らった。メインキャラの何人かは、前作を読んでる読者にはすでになじみのある人物だったのね。読み終わったあとにその辺の情報を知ったが、そう考えるといろいろ得心がいく。

 なお作品自体は単品でも一応は読めた、理解できたつもりだったが、かたやそういう特異な「操り」テーマのミステリシリーズなので、やはり前作から先に読んでおいた方が確実によかったんじゃないかと今にして思う。その辺は失敗した。

 黒幕の存在や、やがて「観測者」の呼称を与えられる殺人実行者の名前は当初からわかっているので、もちろん素直なフーダニットパズラーではない。ただし被害者のミッシングリンクの謎、動機の謎、そして……とか種々の、やや広義のパズラーっぽい要素、ミステリとしての謎の提示や真相のサプライズなどは、ふんだんに取り揃えられている。

 とはいえ今回のこっちは前述のように大枠として、本作がシリーズものだという事実も知らなかったので、作品の構造とどっかで歯車がかみ合わず、いまひとつ楽しめなかったというのがホンネ。正直、夜中に読んでいたせいもあって、後半はずっとうっすら眠かった。メモを取りながら、何とか情報を追い続ける。したがって評点もこの程度。ある意味じゃ、受け手側のワガママなのは自覚しているが。

 『可制御~』はそのうち、気が向いたら読むであろう(汗)。

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