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ミステリの祭典

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殺人プロット

作家 フレドリック・ブラウン
出版日1971年01月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 人並由真
(2024/06/15 06:51登録)
(ネタバレなし)
 その年の8月のニューヨーク。シーズン違いのサンタクロース姿の人物が、ラジオ放送会社「KRBY」の社屋を訪問。そのサンタは、重役(プログラム・ディレクター)のアーサー・D・ダイニーンの命を奪った。その事実を知って、KRBYの大人気メロドラマ『メリーの百万ドル』のメイン脚本家である青年ビル(ウィリアム)・トレイシーは驚愕する。なぜなら謎の殺人者が季節外れのサンタの衣装で正体を隠して殺傷を行なうというアイデアは、彼が準備中のミステリドラマ『殺人の楽しみ』の検討稿に書いておいた内容だからだ。誰かがトレイシーの未発表の脚本を盗み見て殺人を行なった? トレイシーは捜査を進める警察の脇で、独自にマイペースに事件に首を突っ込むが、やがて事態は次の展開を迎えた。

 1948年のアメリカ作品。
 初めて翻訳が出た当時、少年時代にミステリマガジンでレビューを読み、面白そうだと思いながら、ついに今まで読まなかった。
 御贔屓ブラウンの未読のミステリも残り少なくなっているなか、虎の子の一冊ではあるが、仕事が忙しいなか、なんか妙に読みたくなって通読。二日かけて楽しんだ。

 翻訳がブラウン作品ではたぶん珍しいはずの、あの(競馬スリラーだの、スペンサーものだの、の)菊池光。訳文に関しては世のミステリファンの毀誉褒貶あるのは知ってるが、評者は抵抗ない、というか、相性がいいつもりなので、その辺は安心して読む。
 はたして期待通りにサクサクした歯応えの読み応えで、会話の多い都会派の軽パズラーとしてなかなか面白い。

 約290ページの紙幅は長くも短くもないほど良いボリュームだが、最後の20ページまでフーダニットとして謎解きを引っ張るギリギリ感もサービス精神満点。その上で、犯人は(少なくとも評者には)かなり意外な人物であった。この目くらましの仕方は、かの欧米作家の某作品をちょっと思わせたりする。

 伏線や手掛かりをちゃんと張っておいたぞと作者がドヤ顔するように、探偵役の主人公トレイシーがここで気が付いた、あそこで……と、クライマックスの謎解きの際にポイントを並べていくのも非常に楽しい。
 しかしその一方で、どこか一本ネジがゆるんでいるような気もしないでもないが(だって……)、といいつつソの辺も実に良い意味で、一流のB級パズラーという感じで微笑ましい。

 とても心地よい気分で「ああ、50年代の(本作は実質40年代後半だが)海外ミステリは楽しいな」とページを閉じられる好編の一冊。
 評点は0.4点ほどオマケ。

 やっぱいいよね。フレドリック・ブラウンのミステリのアタリ作品(笑)。

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