サーキット・スイッチャー |
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作家 | 安野貴博 |
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出版日 | 2022年01月 |
平均点 | 7.00点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 7点 | 虫暮部 | |
(2024/10/25 12:26登録) 未来が舞台と言っても2029年だからあっという間だ。大胆な想像力。それとも、現状のデータから合理的に類推すれば、これも一つの起こり得る話なのだろうか。正直なところ、私は結構 “数の論理で選択する” 派だったりする。 気になる事項にはそれぞれ巧みな落としどころが用意されておりグッジョブ。挿み込まれるロマンスにもだもだしちゃう。switch にはそのものずばり “転轍する” の意味あり。 ところで、この件で死者は出ても最大二名、しかも片方は犯人だ。経済性で考慮したら、トロッコ問題で “選ばれる側” になってしまうのでは。つまり無理を通すには人質が足りないのでは。あっ、道路に対する被害も加算するのか? |
No.1 | 7点 | 麝香福郎 | |
(2024/06/14 21:31登録) 便利でより安全な車社会の到来は同時に、タクシーやトラック運転手などの雇用を激減させ、職を奪われた者たちが連日「自動運転反対」のデモを繰り広げていた。この完全自動運転アルゴリズムの開発者であり、スタートアップ企業の代表でもある坂本は、仕事場として使っている自動運転車で走行中、何者かの襲撃を受ける。車中では拘束された坂本が意識を取り戻すと、そこにはムカッラフと名乗る男の姿が。 車をジャックしたムカッラフは首都高へ向かい、車中からの動画配信を開始。高速道路の封鎖を要求し、さらに半径二メートル以内への接近、時速九十キロを下回る走行、動画配信の停止、いずれかでプラスチック爆弾が自動的に爆発する仕掛けを施したという。そして宣言する。坂本が殺人犯であることを証明するのだと。 テクノロジーの飛躍的な発達がもたらす功罪を描いたテクノスリラーであり、刑事と敏腕技術者の異色のバディものとしても愉しめ、さらに車の自動運転化に秘められた、あまりに合理的であるがゆえに、赦し難い企みの真相は意外で衝撃的。 本作は義務と責任が重要なキーワードになっている。技術革新を繰り返し、その恩恵をすべての人が受けられるわけではない。その技術によって変わってしまった世界に、絶望と地獄を見る人もいることも決して忘れてはならない。とても考えさせられる作品。 |