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ミステリの祭典

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怖ガラセ屋サン

作家 澤村伊智
出版日2021年10月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 パメル
(2024/06/08 19:24登録)
依頼主から頼まれる復讐、懲戒、悪ふざけ。あの手この手で怖がらせ、願いを叶えてくれる怖ガラセ屋サンに恐怖させられる人たちの7編からなる短編集。
「人間が一番怖い人も」浦部の自宅に会社の後輩・司馬戸が遊びにくる。怪談好きで、婚約者とも怪談クラブで知り合ったらしい。しかし婚約者の発した言葉が恐怖の色に染め上げていく。信頼が計画的に作られたものだったらと疑えば疑うほど怖くなる底知れない恐怖を感じさせる。
「救済と恐怖と」高額なパワーストーンやサロンの代金を払うため、樹理亜は娘の藍凛に体を売るように求める。救いの果てにある地獄が描かれており、ゾッとさせられる。
「子供の世界で」仲良しグループ内の一人をいじめ続け、結果的に死に追いやった小学生三人の罪と罰が描かれる。彼らに待ち受ける恐怖は、まだこれからと思わされる怖さがある。
「怪談ライブにて」怪談ライブで4人の怪談師が各々の怪談を話し始める。怪談話が終了後、客に怪談話を募る。怪談を話すと思ったら、思わぬことが暴露されことに。最後のオチがしっかり決まる。自業自得。
「恐怖とは」不倫現場をとらえるため張り込むゴシック週刊誌カメラマンの菊池と、情報屋の恵子が車内でたたかわせる恐怖論。油断ならない切ない結末。
「見知らぬ人の」四人部屋の病室の自分の向かいの徳永さんのところに毎日、見舞いにくる女性がいる。毎日、欠かさず来て訳のわからない話をして帰る。恐れおののく人々を描きながら、恐怖とは何かという根源的な問いを改めて突き付けてくる。
「怖ガラセ屋サン」謎めいた怖ガラセ屋サンのルーツに迫るルポルタージュ的な一編。断片的な資料から浮かび上がる、その不気味な存在感。恐怖を論じることで読者を恐怖させる。そんなアクロバットに挑み見事に成功している。

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