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ミステリの祭典

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時空に棄てられた女 乱歩と正史の幻影奇譚

作家 長江俊和
出版日2024年02月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 メルカトル
(2024/06/02 22:16登録)
江戸川乱歩と横溝正史。現実に師弟関係にあった二人が挑む不可能事件。

首なし死体と生首が次元を揺蕩い、うつし世と夢は混線し……。
ミステリー界の巨人たちが、悩み、もがき、執筆し、謎について語り、あげく事件の泥沼に巻き込まれる。
Amazon内容紹介より。

巻末の参考文献を見る限り、乱歩と正史の関係性はかなり研究されている様で、二人の掛け合いはなかなか興味深いものがありました。それぞれの代表作にも触れられていますし、その意味では佳作と呼んでも良いかも知れません。事件の謎を解くのは乱歩か正史かそれとも・・・。
しかし、事件が余りにも突飛すぎてちゃんとした着地が期待出来るのか、ワクワクよりも不安の方が強くなってきます。首なし死体と時空を超える生首、只では済まなそうな事件の行方に不安はさらに高まります。

読めば読む程謎は深まるばかり。そもそもこれを論理的に解決に導く事が可能なのか、まあ勿論本格ミステリなので当然真相は明らかになるのですが、その途中でこの作品のカラクリに気付いてしまい、驚かされるべきところで驚けなかったのは実に不本意でした。ボンクラの私でもこれだから勘の良い人なら当然解ってしまうでしょう。なのでそこをマイナス点としてこの評点にしました。
決して面白くない訳ではありません、作者得意のプロットの妙は楽しめる筈ですし、乱歩や正史に興味のある方は読んでみるのも一興かと思います。見事騙されるか否かが評価の分かれ目になるのかも知れませんね。

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