(2024/06/01 23:42登録)
(ネタバレなしです) 名無しの弁護士からの依頼、名無しの私立探偵の捜査、名無しのバーテンの謎解き推理と3人もの名無し人物が登場するのを特徴として1972年から1991年にかけて全部で36作の短編が書かれた三番館シリーズ、短編集としては複数の出版社から1974年から1992年にかけて6つの短編集が出版されたのが最初です。但し「竜王氏の不吉な旅」(1972年)という短編は長編化の構想があったためかこの短編集には収められませんでした(残念ながら長編化はとうとう実現しませんでした)。完全全集としては全3巻の出版芸術社版(2003年)と全6巻の創元推理文庫版(2003年)が最初です。私は3番目の全集である全4巻の光文社文庫版で読みました。この光文社文庫版は作品発表順に収めているのを売りにしています。第1短編集にあたる本書(2022年)は「春の驟雨」(1972年)から「サムソンの犯罪」(1974年)までの6作を収めています。初期作品ゆえか構成や規模がばらばらで(個性的とも言えます)、「新ファントム・レディ」(1972年)は100ページ超え、「白い手黒い手」(1973年)も90ページ近くと中編サイズです。真犯人は誰かよりもどのように別の人物を偽犯人に仕立てたのかの(トリックの)謎解きに重点を置いた作品など本格派推理小説としてはやや型破りなものが多いです。最後の一行でトリックの全貌を明かすのに成功した「竜王氏の不吉な旅」が個人的には1番印象に残りました。
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