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ミステリの祭典

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イーシャの舟

作家 岩本隆雄
出版日1991年07月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 メルカトル
(2024/05/31 22:36登録)
大幅に改稿されたソノラマ文庫で読了。壮大なSF、ちょっとユーモラスなファンタジー、そして極上のラブ・ストーリーとは褒め過ぎか、いやそんな事はないと思います。まず何と言っても全ての登場人物がそれぞれの役割を確りと果たすべく、生き生きと描かれているのが素晴らしいです。無駄なキャラは一切出て来ませんので、読書に集中出来ます。

主人公である2メートルを超える威容の若者年輝が偶然出会った、我が儘で乱暴な天邪鬼の成長と周囲の人間との関係性を描いた物語ですが、どこからどこまでも良く練られて考え抜かれたこのストーリーは読む者を癒し、優しい気持ちにさせる作用を持っているように感じます。人によっては何度か落涙する事でしょう。
ただ一番肝心なシーンが余りに呆気なく、ここはもっと情感を込めてページを割くべきだと思いました。しかしそれも最後には見事に返り討ちに遭い、参りましたと頭を下げるしかありません。そして暫く消えない余韻に浸れる貴重な体験をさせて貰いました。ありがとうという、作者への感謝の気持ちでいっぱいです。

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