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ミステリの祭典

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夢野久作 あらたなる夢

作家 夢野久作
出版日2014年02月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 みりん
(2024/05/29 00:59登録)
これはとてもとても楽しい。手元に置いておきたい一冊。
メモに残っていた『猟奇歌』の未発表作品、『ドグラ・マグラ』の草稿、夢野久作の単行本未収録エッセイなど、全集にもないような代物が載っています。『ドグラ・マグラ』の草稿はきちんと読み取れませんが、完成版と結末部分が大きく違うようです。
その他エッセイなどをパラ読みしましたが、やはり目玉は江戸川乱歩の夢野久作評でしょう。夢野久作の一周忌に同氏を偲ぶ会にて、乱歩の講演した内容が記されています。

江戸川乱歩が貶した夢野作品と評
『あやかしの鼓』→ちょっとばかり達者な緞帳芝居のよう
『ドグラ・マグラ』→わけのわからぬ小説

江戸川乱歩が褒めた夢野作品と評
『押絵の奇蹟』→全時代に対するあこがれが満ち溢れて見える。
『氷の涯』→謎の扱い方が独特でチェスタートンを彷彿させる。幕切れも見事な傑作。
乱歩は『押絵の奇蹟』と『氷の涯』が2つ並んで夢Qの最高傑作であると断言していますが、他にも『死後の恋』『瓶詰地獄』『人の顔』『白菊』などにも感心したと言っています。その他、夢野久作の探偵小説観についても軽く触れていました。

ちなみに夢野久作の江戸川乱歩評も読めますよ(青空文庫で)
それによると『心理試験』『D坂の殺人』『二銭銅貨』などは構想や行文の苦心が一つ残らず、西洋人の模倣にしか見えない。今後乱歩は二度と読まないと決心したとクソミソに貶しています(笑)
その後、『白昼夢』を読んでから乱歩の偉大さを認識し、『陰獣』『人間椅子』『赤い部屋』『屋根裏の散歩者』などで評価を上げたかと思うと、『パノラマ島奇譚』『蟲』には失望するなど、夢Q独特のこだわりがあるようでした。江戸川乱歩と夢野久作って「ポオ信者」という共通の信仰対象があるだけで、ふたりっきりになると気まずい関係だったんだろうな(笑)

あとエッセイの中では医学者・養老孟司の『ドグラ・マグラの科学』が大変魅力的でした。作中で提唱される「胎児の夢」「脳髄論」が当時としては正鵠をいており、現代の生物医学の予言までも含んでいることを説明しています。それだけでなく、養老孟司は『ドグラ・マグラ』の主題は時間であり、時間について論理的かつ具体的に思考し、苦しんだ結果生み出されたのが傑作『ドグラ・マグラ』であると言います。確かにあの物語は時計で始まり、時計で終わる。『ドグラ・マグラ』という小説の新たな読み方が垣間見えた気がして、また読み返したくなった。
言いたいこと全部書くとキリがないのでこのへんで…

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